法律・制度

よくわかるシリーズ!改正公益通報者保護法

なるほど!改正公益通報者保護法6つのポイント【その1】


 このコラムについて 

このコラムは、改正公益通報者保護法を理解する上で大切な6つのポイントを順に1つずつ解説していく6回シリーズです。今回は、その1回目です。

ポイント【その1】

事業者は、内部通報に適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない

<法改正の経緯>
そもそも、公益通報者保護法とは、企業の不祥事による被害拡大を防止するための内部通報について、通報者の保護に関するルールを定めた法律です。企業の不祥事が頻発し、社会問題化している現代社会においては、不祥事をより早期発見・早期是正して、被害の拡大を防止する必要があります。そこで、事業者自らが不正を是正しやすくするとともに、通報者が安心して通報を行いやすくし、また保護されやすくすることによって、公益通報者保護法が改正されることになりました。

今回の法改正で、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備義務が定められました。(公益通報者保護法11条)

ただし、中小企業(従業員が300人以下)については努力義務とされています。(同法11条3項)。

この「従業員300人」には、パートタイマーも含まれますが、役員は労働者ではないので含まれません。(「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)に関するQ&A(改正法Q&A)令和2年8月版」)

この11条には、以下のように書かれています。

(事業者がとるべき措置)
公益通報者保護法 第11条
1 事業者は、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(次条に おいて「公益通報対応業務」という。)に従事する者(次条において「公益通報対応業 務従事者」という。)を定めなければならない。
2 事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の規定の遵守を図るため、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。
3 常時使用する労働者の数が300人以下の事業者については、第一項中「定めなければ」とあるのは「定めるように努めなければ」と、前項中「とらなければ」とあるのは「とるように努めなければ」とする。
4 内閣総理大臣は、第1項及び第2項(これらの規定を前項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において単に「指針」という。)を定めるものとする。
5 内閣総理大臣は、指針を定めようとするときは、あらかじめ、消費者委員会の意見を聴かなければならない。
6 内閣総理大臣は、指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
7 前2項の規定は、指針の変更について準用する。
引用元|消費者庁 公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)新旧対照条文

すなわち、事業者に課された義務を要約すると、以下の2点になります。

事業者に課された義務・1

公益通報対応業務従事者を定める義務(同法11条1項)

この「公益通報対応業務従事者」とは、公益通報を受け、社内調査を行い、是正措置をとる業務に従事する者をいいます。

事業者に課された義務・2

公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとる義務(同法11条2項)

この「必要な体制の整備その他の必要な措置」とは、通報窓口の設定、適切な社内調査、是正措置、通報を理由とした不利益取扱いの禁止、通報者に関する情報漏えいの防止、内部通報規程の整備・運用などが挙げられます。(「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)に関するQ&A(改正法Q&A)令和2年8月版」より)

これらの具体的な内容については、指針が定められ、公表される予定となっています(同法11条4項~7項)。

指針の内容について検討する、「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会」が公開している「公益通報者保護法に基づく指針等に関する検討会 報告書」では、指針案及びその背景となる考え方が示されており、個々の事業者においても参考にできると思います。

原則は、事業者1社ごとに窓口を設置

なお、通報窓口の整備について、「公益通報者保護法の一部を改正する法律(令和2年法律第51号)に関するQ&A(改正法Q&A)令和2年8月版」には、「改正後の法においては、独立した法人格を有する事業者ごとにこれら義務を課していることから、グループ全体ではなく、関係会社ごとに改正法に基づく通報窓口を整備する義務を果たしていただくことが必要になります。」との記載があります。

そこで、原則としては、グループ全体で1つではなく、事業者ごとに通報窓口を設置するのが望ましいと考えられます。
ただし、同Q&Aによれば、「子会社が、自らの内規において定めた上で、通報窓口を親会社に委託して設置し、従業員に周知しているなど、子会社として必要な対応をしている場合には、 体制整備義務を履行していると評価できるものと考えられます。」とのことであり、子会社において必要な対応をしっかりと行っていれば、 親子会社において親会社で通報窓口を一元化することは許容されることもあるようです。

行政措置の対象に

この整備義務を適切に履行しない場合、行政措置(助言、指導、勧告、勧告に従わない場合の公表)の対象となります(同法15条、16条)。

解説者

馬場 雅敬
コンプライアンス経営アナリスト
一般社団法人公益通報制度推進機構 代表理事。1993年 慶應義塾大学卒業。2005年 日本放送協会(NHK)を退職して会社設立。数社の取締役、社外取締役を歴任し、コンプライアンス経営の拡充と業績拡大に貢献。2020年 国民生活の安心・安全を理念に日本グリーンホイッスルを立ち上げ、2021年 一般社団法人公益通報制度推進機構として法人化。

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